頑張りすぎていませんか?
「早く治したいので、頑張ります」
施術のあと、そう言って帰られる方がいます。
真面目な方ほど、そうです。
ストレッチを毎日欠かさず、睡眠時間を確保し、体にいいと聞いたことは一通り試してみる。
不調を、自分の努力で何とかしようとされます。
ご自身の体と真剣に向き合うその姿勢は、本当に素晴らしいと思います。
ただ、長く体に触れてきたなかで、私は少し違う景色も見てきました。
頑張っている方ほど、体がなかなか本来の状態に戻ってこないことがある。
私はそう感じています。
今回は、回復と「やる気」の関係について、私の考えをお話しします。
体の大部分は、意志では動いていない
少しだけ、ご自身の体に意識を向けてみてください。
今この瞬間も、心臓は脈を打っています。
肺は空気を入れ替え、胃や腸は食べたものを消化し、体温は一定に保たれています。
このうちのどれかを、あなたは「よし、やろう」と決めて動かしているでしょうか。
おそらく、どれも違うと思います。
眠っているあいだも、心臓は止まりません。
考えごとに夢中になっていても、呼吸は続いています。
こうした働きを担っているのが、自律神経です。
名前のとおり、本人の意志とは関係なく、自ら律して働いている神経です。
歩くときも同じです。
一歩ごとに、どの筋肉をどの順番で使うかを考えている人はいません。
転びそうになれば、考えるより先に手や足が出ます。
私たちが意志で動かしているのは、体のほんの一部です。
体の大部分は、やる気とは関係のないところで、もともと備わった「仕組み」によって動いています。
回復もまた、仕組みの一部
では、回復はどうでしょうか。
指を切ったとき、傷口は数日でふさがっていきます。
私たちが「治れ」と念じたから、ふさがるわけではありません。
骨折をすれば、病院でギプスをして固定します。
けれど、折れた骨そのものをつないでいるのは、ギプスでもお医者さんでもなく、体自身です。
疲れた日も、ひと晩よく眠れば、翌朝には体が軽くなっています。
体には、崩れたあと、元の状態へ戻ろうとする働きがはじめから備わっています。
回復力という言葉についてでもお話ししましたが、私は、体を治しているのは体そのものだと考えています。
つまり、回復は、頑張って生み出すものではありません。
条件がそろったときに、自然と起こるものです。
心臓の拍動と同じように、回復もまた、体の仕組みの一部なのだと私は捉えています。
頑張るほど、戻れなくなることがある
ここで、冒頭の話に戻ります。
頑張っている方ほど、なぜ体が元に戻りにくいのか。
「頑張る」とき、体の中で何が起きているかを想像してみてください。
歯を食いしばる。
息を止める。
肩に力が入る。
目に力がこもる。
これらは、体が「まだ戦いの最中だ」と受け取る合図です。
目と、顎と、後頭部でも書きましたが、体が見張りを続けているあいだは、休むことや修復することが後回しになりやすい。
私はそう考えています。
「早く治さなければ」という焦りそのものが、体を緊張させていることもあります。
そして、もうひとつ。
人のやる気には波があります。
頑張れる日もあれば、どうしても頑張れない日もある。
そのやる気を頼りに体を立て直そうとすると、頑張れなかった日に「また続かなかった」と自分を責めてしまいます。
責めれば、体はさらに身構えます。
回復を「やる気」に預けてしまうと、そのときの気持ちの波がそのまま体の波になってしまうのです。
施術者の役割は、体が戻れる条件を整えること
では、私は施術で何をしているのか。
体を外から「治している」とは、私は考えていません。
私がしているのは、体の仕組みが本来どおりに働けるよう、その妨げているものを外していくことです。
たとえば、足元の軸がずれていると、体は倒れないように無意識に力み続けます。
この話は距骨と、重力の中心軸で詳しく書きました。
軸がずれると呼吸も浅くなりやすいことは、軸がずれると、息は上に上がるでお話ししています。
筋肉の質が落ちて、血液のめぐりが滞っていることもあります(筋肉の質と自律神経)。
こうした「戻るための条件」を、一つずつ整えていく。
条件が整えば、あとは体がやってくれます。
施術のあとに眠くなる方や、体がふっと緩む方がいるのは、体が見張りを解いて、回復の仕組みに切り替わった合図だと私は捉えています。
施術の具体的な進め方は、施術の方法と特徴をご覧ください。
日常でも、意志より「仕組み」に任せる
この考え方は、日々の暮らしにもそのまま使えます。
毎日、自分を奮い立たせる必要はありません。
体と同じように、暮らしにも小さな仕組みをつくっておけばいいのです。
食事も同じです。
我慢で食べる量を抑えるより、眠る時間を確保したことで食べる量が変わった研究を、「血糖値は、食べたものだけで決まらない」で紹介しています。
ひとつめは、前もって決めておくこと。
寝る時間、起きて最初にすること。
毎回「今日はどうしよう」と迷うと、そのたびに頭が疲れ、言い訳も出てきます。
歯磨きのように、考えずにやれる形にしておくと、気持ちに左右されにくくなります。
ふたつめは、最低ラインを決めておくこと。
調子のいい日はしっかり体を動かす。
調子の悪い日は、深い呼吸を三回だけ。
ゼロにしないことが大切です。
少ない日があっても、糸が切れなければ、体はちゃんと覚えています。
みっつめは、環境に任せること。
夜にスマホを見すぎてしまうなら、我慢するより、充電器を寝室の外に置くほうが確実です。
意志で戦うより、戦わなくていい場所をつくるほうが、体にもやさしい。
どれも、頑張るための工夫ではありません。
頑張らなくても回るようにするための工夫です。
日々の具体的な整え方は、日常での整え方でも紹介しています。
頑張らなくても、体は戻ろうとしている
心臓は、あなたが励まさなくても動いています。
傷は、あなたが念じなくてもふさがっていきます。
体は、あなたが思っているよりずっと前から、あなたの命を支えようと働き続けています。
だから、回復を自分の努力だけで背負わなくていいのです。
あなたがすることは、体が戻ってこられる条件を、少しずつ整えていくこと。
そして、あとは体に任せること。
戻るということでお話ししたように、大切なのは崩れないことではなく、崩れたあとに戻れることです。
頑張っても戻りきらないと感じている方は、一度、体が戻れない理由を一緒に探してみませんか。
気合いではなく、仕組みのほうから。
初めての方の施術がどのように進むかは、初診の流れでご紹介しています。
のむら整骨院 院長 ![]()







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院長 野村晃生(のむら あきお)
柔道整復師/臨床歴20年以上
自律神経のはたらきを軸に、
身体が安心できる『整える施術』を大切にしています。








