考えても不安が消えないとき、体では何が起きているのか|見張り続ける体と「不安を手放す呼吸」

その不安、体が見張っていませんか?

この記事のポイント

考えても消えない不安には、胸・みぞおち・首の付け根から後頭部に残った緊張が関わっていることがあります。体が危険に備えて「見張り」を続けると、その体の感覚がまた不安を呼び、不安がさらに体を固くします。頭で不安を消そうとするより、まず体の力みに気づき、ゆっくり息を吐いてゆるめることから始めてみてください。

理由を探しても、不安が消えないとき

不安について相談すると、「考えすぎだから」「気持ちの持ちようだから」と言われることが多いと思います。もちろん、考え方や心の状態も関係しています。ただ、長く施術をしていると、「これは頭だけの問題ではない」と感じる場面が本当に多くあります。

患者さんからは、こんなお話をよく伺います。

  • 「今、大きな悩みがあるわけではないんです」
  • 「頭では大丈夫だと分かっているんです」
  • 「それなのに、なぜか落ち着かないんです」

胸のあたりがザワザワする。じっとしていても休まらない。寝ようとしても、どこかが緊張している。そこで「何が不安なんだろう」と、仕事や家族、健康、将来のことに理由を探し始めます。

そこに原因があることもあるでしょう。けれど、考えて納得して「もう大丈夫」と思っても、しばらくするとまた不安が出てくる。こういう方は、実は少なくありません。

私は施術をしていて、そういう方の体には共通した状態があるように感じています。消えない不安の理由は、心より先に、体のほうにあるのかもしれません。

不安が強い人の体に多い、3つの緊張

体の状態は一人ひとり違います。そのうえで、不安が強い方の体に触れると、私は次の3か所に力みが残っていることが非常に多いと感じています。

  1. 胸まわり:胸の上のほうだけで浅く呼吸していて、肺が十分に広がっていない
  2. みぞおち:本人は楽に寝ているつもりでも、お腹の上のほうがグッと固くなっている
  3. 首の付け根から後頭部:肩こりの自覚はないのに、ずっと緊張が入ったままになっている

大事なのは、ご本人がこの力みに気づいていないことです。「普通に呼吸しています」「肩こりはそんなに感じないです」とおっしゃる方がほとんどです。

長いあいだ力んでいると、その力みが「普通」になります。ずっと肩を上げている人は、肩を上げていることが分からなくなります。浅い呼吸が続いている人は、それが浅いと分からなくなります。力んでいることが当たり前になると、力んでいることにも気づけなくなるのです。

※ 首の後ろや後頭部が固まる仕組みは「目と、顎と、後頭部」で、横隔膜と浅い呼吸の関係は「軸がずれると、息は上に上がる」で詳しく書いています。

体は、まだ「見張っている」

では、なぜこの緊張は抜けないのでしょうか。私は患者さんに、「体が、まだ見張っているんですよ」とお伝えしています。

人の体は危険を感じると、すぐ動けるように準備します。筋肉を固くし、呼吸を変え、心拍を上げ、周りに注意を向けます。これは自分を守るための大切な反応で、悪いものではありません。

問題は、危険が去ったあとも、体だけが「まだ気を抜いてはいけない」と構え続けることです。強いストレスが長く続いた、眠れない日が続いた、動悸やパニックのような状態を経験した。そうした出来事が終わったあとも、体は「また何か起こるかもしれない」と身構えたままになっていることがあります。

すると、夜になれば「今日も眠れないかもしれない」、少し心臓がドキッとすれば「また動悸かもしれない」と、体を監視するようになります。監視するとさらに力が入り、呼吸が浅くなり、胸が苦しくなる。その感覚を脳が受け取って「何かおかしい」と判断し、また不安が出てきます。

不安と体の緊張が互いを強め合う循環の図

つまり、不安だから体が緊張するだけでなく、体が緊張しているから不安が生まれやすくなるという逆方向もあります。どちらが先かは簡単に分けられず、お互いが影響し合っています。

体の感覚が気分や不安に影響することは、「内受容感覚」の研究として一般にも知られてきています。(Paulus & Stein, 2010)
ここで書いている体の見立ては、その知見をもとにした、私の臨床での実感です。

不安を消そうとするほど、力が入る

不安が出てくると、人は当然「なくしたい」と思います。早く安心したい、この嫌な感じを消したい。だから考え、調べ、原因を探し、呼吸を整えようとします。それ自体は悪いことではありません。

ただ、「この不安を絶対に消さなければ」という思いが強くなりすぎると、体にとってはそれも一つの緊張になります。

  • 不安を消そうとして、不安をずっと監視してしまう
  • 呼吸を良くしようとして、呼吸をずっと監視してしまう
  • 眠ろうとして、眠れているかをずっと確認してしまう

すると、「まだ不安がある」「まだ息が浅い」「まだ眠れていない」という情報ばかりを拾うようになります。監視そのものが、体の見張りを続けさせてしまうのです。

だから私は、頭で不安を消そうとするより先に、体に「もうそんなに構えなくてもいいですよ」と伝える方向から入ることをおすすめしています。

なぜ「吸う」ではなく「吐く」から入るのか

体からゆるめる入口として、私は「吐く息」を使います。理由は、一般的に分かっていることと、臨床での実感の二つです。

一般的に分かっていること

  • 心拍は呼吸に合わせて揺れています。息を吸うと少し速くなり、吐くと少しゆっくりになります。この揺れには、体を休める側の神経(副交感神経の一つ、迷走神経)が関わっています。
  • ゆっくりした呼吸で、この休める側の神経の働きを示す指標が高まることは、223件の研究をまとめた分析で確認されています(Laborde ほか, 2022)。
  • ただし、「吐く息を吸う息より長くする」ことでさらに効果が高まるかは、研究によって結果が分かれていて、まだはっきりしていません(2024年の検証研究)。

私が「吐く」を大切にする理由

「呼吸」という字を見てください。「呼」が先で、「吸」が後です。
「呼」は息を吐くこと。息は、吐くことから始まります。

東洋の考え方では、出さなければ入ってこない、と言われます。コップが古い水で満たされていたら、新しい水は入りません。吐いて自分の中に少し空きができれば、頑張って吸わなくても、息は自然に入ってきます。

不安が強いとき、多くの方は「深呼吸しなきゃ」と、吸うほうを頑張ろうとします。でも、見張っている体にとって、吸おうとする努力はもう一つの仕事になります。だから私は、吐くほうだけを意識して、吸うのは体に任せることをおすすめしています。

つまり、吐く息を長くすること自体よりも、吸おうと頑張らないことのほうが大事だと私は考えています。

実践:不安を手放す呼吸

いつでも、どこでも、その場でできる方法です。座っていても、横になっていても構いません。今ある不安や落ち着かなさは、消そうとしなくて大丈夫です。

  1. 感じている場所を探す:その感じが体のどこにあるか、そっと探します。胸、みぞおち、喉、首の後ろ、お腹。分からなければ「何となくこの辺」で十分です。
  2. 判断せずに意識だけ向ける:「これは何だろう」「どうしてだろう」とは考えません。「ああ、ここに何か感じているな」と見ておくだけにします。
  3. 口から、ゆっくり長く吐く:その場所から少し力を抜くつもりで、ふーっと吐きます。溜まっていた力みが、息と一緒に外へ流れていくような感覚で。全部吐き切らなくて大丈夫です。
  4. 吸う息は体に任せる:吸おうとしなくても、息は自然に入ってきます。
  5. もう一度くり返す:場所に意識を向けたまま、もう一度ゆっくり吐き、吸う息は体に任せます。

終わったら、体の様子を眺めてみてください。胸が少し楽になった、みぞおちが柔らかくなった、肩が少し下がった、息が入りやすくなった。あるいは、何となく落ち着いた。それくらいで十分です。何も変わらなくても大丈夫です。

ここで大切なのは、不安を追い払うことではありません。不安を消そうとする力を、少しやめることです。体が少しゆるむと、心はあとから静かになってきます。

動画で一緒にやってみる

言葉だけでは分かりにくい方は、動画で実際の声かけに合わせてやってみてください。

不安を感じる場所ごとの、次の一歩

呼吸の手順1で「感じている場所」が見つかったら、その場所に合わせたセルフケアも試してみてください。

感じる場所よくある感覚次に読む記事
胸詰まる、ザワザワする、動悸不安で胸が詰まるときに|胸から整えるセルフケア
喉何かが引っかかる、飲み込みにくい喉のつまり感があるときに|指先トントンのセルフケア
みぞおち・お腹固い、重い、キュッと縮むお腹とメンタルはつながっている|腸から整えるセルフケア
首の後ろ・後頭部力が抜けない、頭が重い休んでも疲れが抜けないときに|頭蓋骨の硬さと自律神経
頭(考えが止まらない)寝る前に考えごとがめぐる【寝る前3分】白隠禅師の「内観」と「軟酥」

不安と一緒に自分を責める気持ちが強い方は、「嫌な自分」を責めてばかりいるあなたへも参考にしてください。

目指すのは「不安を感じない体」ではなく「戻れる体」

不安は本来、危険を知らせてくれる大切な感覚です。問題は、不安や緊張が出ることではなく、出たあと元の状態に戻れなくなっていることです。体に必要なのは「絶対に緊張しないこと」ではなく、緊張しても、また戻れる力だと私は考えています。

この「戻る」ということについては、「戻るということ」(自律神経と回復力 第5回)で詳しく書いています。

施術の現場から:肩のつらさの奥にあったもの

本人が一番気にしている場所と、体が一番構えている場所は、必ずしも同じではありません。肩のつらさで来院された方の例を二つ紹介します。

例1:肩ではなく、横隔膜が構えていた

触れてみると、肩よりも横隔膜のほうが強く緊張していました。横隔膜は胸とお腹を仕切る、呼吸の主役の筋肉です。ここが構えたままだと胸の上だけで呼吸するようになり、それを首や肩の筋肉が補い続けます。私の見立てでは、肩のつらさはその結果でした。横隔膜がゆるむと「あれ、息が入ります」と言われ、肩も自然に下がっていきました。

例2:心臓と心膜のあたりに、怒りを抱えていた

別の方は、心臓とそれを包む心膜のあたりに強い緊張がありました。私は施術の中で、体の緊張と、言葉にしていない感情が結びついていると感じることがあります。この方の場合、そこにあったのは怒りでした。

どちらの方も、肩だけを診ていたら届かなかったところです。施術では、その人の体がどこで緊張を作っているのかを探し、体がゆるんでいく順番を大切にしています。今日の呼吸のように自分でゆるめられるところは、ご自身でやってみてください。自分では届かないところは、誰かの手を借りてもいいと私は思っています。

→ 【施術の方法と特徴】

まとめ:考えても消えないときは、頭から体へ戻る

不安は、頭だけで何とかしようとすると、かえって強くなってしまうことがあります。考えても考えても消えないときは、一度、頭から体へ戻ってみてください。

  • 胸は固くなっていないか
  • みぞおちに力が入っていないか
  • 肩が上がっていないか
  • 息を止めていないか

そして、一度だけ、ふーっと吐いてみる。「これをやれば絶対に不安が消える」と考える必要はありません。そう考えると、またコントロールになってしまいます。変わってもいいし、変わらなくてもいい。今の体に気づいて、少しゆるめてあげるだけです。

おすすめは、強い不安のときだけでなく、ちょっとしたモヤモヤや焦りを感じたときにも練習しておくことです。軽いものから慣れておくと、強い不安が出てきたときにも対応しやすくなります。くり返すうちに、体は「もうずっと見張っていなくてもいいんだ」ということを思い出していきます。

これは、不安を消す練習ではありません。不安があっても、自分の元の体に戻ってこられる練習です。

よくある質問

呼吸をしていると、かえって不安が強くなります。

感じている場所を探すことが、監視のようになっているのかもしれません。そのときは場所探しをやめ、吐く息だけに任せてみてください。それでもつらいときは、無理に続けず、目を開けて周りの景色を眺めるだけでも構いません。

1日に何回やればいいですか?

回数は決めなくて大丈夫です。気づいたときに一度だけ、で十分です。「何回やらなければ」と決めると、それがまた緊張になります。

病院に行ったほうがいいのは、どんなときですか?

初めて出る強い胸の痛みや動悸、息苦しさ、意識が遠のく感じがあるときは、まず医療機関を受診してください。検査で異常がないと言われたあとも不安や体の緊張が続くときは、体の側からのアプローチを試す価値があると私は考えています。

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