同じストレスでも、朝と夜では身体の反応が違う?

その悩み、
夜に考えていませんか

同じ出来事でも、夜は重く感じる

朝なら「まあ、なんとかなるか」と思えたことが、夜になると、妙に重たく感じる。

布団に入ってから、仕事のことや家族のことが頭を離れない。

そんな経験は、多くの方にあると思います。

これまで、こうした違いは「疲れているから」「気持ちの問題」と片づけられがちでした。

けれども、身体の側から見ると、もう少し別の理由があるのかもしれません。

北海道大学の研究で、同じ心理的ストレスを受けても、朝と夕方では、身体の内側の反応が違っていたことが報告されています。

この記事では、その研究を入口にして、ストレスを受けたときに身体の中で何が起きているのか、そして、自律神経とホルモン、体内時計がどのように関わっているのかを、できるだけ分かりやすくお伝えします。

ストレスを受けたとき、身体は二つの道で応える

緊張する場面に立たされると、身体はすぐに反応します。

そのとき働いているのは、大きく分けて二つの仕組みです。

一つ目は、交感神経です。

人前で話すときに心臓がドキドキする、手に汗をかく、呼吸が浅くなる。
これは交感神経が働き、身体を「動ける状態」に切り替えている反応です。
数秒単位で立ち上がる、速い反応です。

二つ目は、ホルモンによる反応です。

脳の奥にある視床下部から指令が出て、下垂体を経由し、腎臓の上にある副腎からコルチゾールというホルモンが分泌されます。
この流れは、視床下部・下垂体・副腎の頭文字をとって「HPA系」と呼ばれます。

こちらは、ストレスを受けてから数十分かけて高まっていく、ゆっくりした反応です。

コルチゾールは「ストレスホルモン」と呼ばれることが多いため、悪者のように思われがちです。

けれども実際には、血糖を保ってエネルギーを供給したり、炎症を鎮めたりしながら、ストレスのある状況に身体を適応させる役割を担っています。

交感神経が「すぐに動く」ための反応だとすれば、コルチゾールは「その状況を持ちこたえる」ための反応だと、私は捉えています。

この二つがそろって、身体はストレスに応えているのです。

北海道大学の実験|朝と夕方で、何が違ったのか

北海道大学の山仲勇二郎氏らの研究グループは、健康な若い男女27名を対象に、次のような実験を行いました。

まず、参加者には腕時計型の活動量計をつけてもらい、2週間、規則正しい生活を送っていることを確認しました。

そのうえで、参加者を二つのグループに分けました。

  • 朝のグループ(14名):起床から2時間後に試験
  • 夕方のグループ(13名):起床から10時間後に試験

試験の内容は、3人の面接官の前でのスピーチと暗算です。
約15分間、人から評価される緊張感の中で課題に取り組んでもらうもので、心理的ストレスの研究で広く使われている方法です。

その前後で唾液を採取してコルチゾールを測り、心拍数も記録しました。

結果は、次のとおりでした。

心拍数コルチゾール
朝のグループ試験中に上昇試験後に有意に上昇
夕方のグループ試験中に上昇有意な上昇なし

心臓のドキドキは、朝も夕方も同じように起きていました。

けれども、コルチゾールの反応だけが、時間帯によって違っていたのです。

研究者はこの結果から、朝は交感神経とHPA系の両方でストレスに応えているのに対して、夕方以降は交感神経だけで応えている可能性がある、と考察しています。

なぜ、時間帯で反応が変わるのか

鍵を握っているのは、体内時計です。

コルチゾールは、ストレスがなくても一日の中で量が変わっています。
目覚めの直後に最も多く、そこから少しずつ減り、夕方から夜にかけて最も少なくなります。

朝のコルチゾールは、眠っていた身体を起こし、一日の活動に向けてエンジンをかける役割を担っています。
夜に少なくなるのは、身体が休息と眠りの準備に入るためです。

このリズムを刻んでいるのが、脳の視床下部にある「視交叉上核(しこうさじょうかく)」という小さな部位です。
朝の光を目から受け取り、全身の時計の針を合わせる、いわば親時計の役割を果たしています。

今回の研究でも、参加者全員が、朝に高く夕方に低いという、このリズムを示していました。

研究者は、ストレスへのコルチゾールの反応が朝と夕方で違ったのは、この体内時計によるコルチゾールの分泌リズムと関係していると考えています。

つまり、身体は一日中同じ状態でストレスを待ち構えているわけではない、ということです。

朝には朝の、夜には夜の身体があり、同じ出来事でも、その時間の身体なりのやり方で受け止めているのです。

体内時計の進み方には男女で差があり、眠る時刻と心の状態の関係にもその違いが表れたという研究については、「同じ夜更かしでも、女性の体には「もっと遅い夜」になる」で書いています。

夜は、交感神経だけで受け止めている

この研究を読んだとき、私は臨床で出会う多くの方の姿が重なりました。

夜になると、目がさえる。
奥歯を噛みしめている。
首の付け根から後頭部にかけて、こわばりが抜けない。

身体は布団の上で横になっているのに、内側では警戒が解けていない。
そういう方が、少なくありません。

コルチゾールは、ストレスの状況を持ちこたえ、やがて反応を鎮めていく働きにも関わっています。

そのホルモンの支えが少ない時間帯に心理的なストレスを受けると、身体は交感神経の緊張だけで、その出来事を受け止めることになります。

私は、夜の考えごとが身体に残りやすい背景の一つが、ここにあるのではないかと捉えています。

交感神経の緊張は、心拍だけでなく、目・顎・首まわりの筋肉のこわばりとしても現れます。
このことは、目と、顎と、後頭部の記事でも詳しくお伝えしました。

夜の悩みが重く感じられるのは、心が弱いからではありません。

その時間の身体が、そういう受け止め方をしているのです。

そう知るだけでも、夜の自分を責める気持ちは、少し和らぐのではないでしょうか。

この研究から言えること、まだ言えないこと

ここで、一つだけ大切なことをお伝えしておきます。

この研究は、健康な若い方27名を対象にした、比較的小さな研究です。
朝と夕方の試験を受けたのも、それぞれ別の人たちでした。

また、「夜のストレスが病気を引き起こす」ことを確かめた研究でもありません。

この研究が示したのは、「心理的ストレスに対するコルチゾールの反応が、時間帯によって違った」という事実です。

ですから、夜を必要以上に恐れる必要はありません。

大切なのは、身体の反応が時間とともに変わっているという視点を、自分の暮らしに持っておくことです。

夜の自分を、朝の物差しで測らない

では、日々の暮らしの中で、どのように向き合えばよいのでしょうか。

ここからお伝えすることは、今回の研究で効果が確かめられた方法ではありません。
身体の時間のリズムを踏まえて、私が患者さんにお話ししている日常の工夫です。

大事な決断は、夜にしない

夜は、交感神経だけで出来事を受け止めている時間です。
答えの出ない問題を、今夜のうちに片づけようとするのは控えましょう。

気になることは、一つだけ紙に書いて置いておく

頭の中で回り続けることを、紙の上に移します。
「明日の朝、もう一度見る」と決めるだけで、身体は少し警戒を解きやすくなります。

ゆっくり息を吐き、顎と目の力を抜く

交感神経の緊張は、顎や目のまわりに残りやすいものです。
息を長めに吐きながら、奥歯を離し、まぶたの力をゆるめてみてください。

朝の光を浴びる

体内時計の針は、朝の光で合わせられます。
夜を整えることは、実は朝から始まっています。

眠りそのものにお悩みの方は、不眠症(入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒)のページも参考にしてください。
考えても不安が消えないときの身体については、考えても不安が消えないとき、体では何が起きているのかで詳しくお伝えしています。

身体は、時間とともに働き方を変えている

私たちは、朝も夜も同じ自分で生きているように感じています。

けれども身体の中では、自律神経もホルモンも、体内時計に合わせて刻々と働き方を変えています。

同じ出来事でも、朝と夜では受け止め方が違う。

それは心の弱さではなく、身体が時間とともに生きている証です。

夜の自分を、朝の自分と同じ物差しで責めなくていい。

自分の身体がどのように働いているのかを知ることは、自分との付き合い方を、少し優しくしてくれるのだと私は考えています。


夜になっても、身体の警戒が解けない。
目や顎、首の付け根のこわばりが、朝まで残っている。

そうした緊張は、ご自分ではなかなか気づきにくいものです。

のむら整骨院では、身体の状態を外から丁寧に確かめながら、警戒が解けやすい身体へと整えていくお手伝いをしています。

気になる方は、初めての方へをご覧ください。


のむら整骨院 院長 野村晃生

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参考文献

  • Yamanaka Y, Motoshima H, Uchida K. Hypothalamic-pituitary-adrenal axis differentially responses to morning and evening psychological stress in healthy subjects. Neuropsychopharmacology Reports. 2019;39(1):41-47. https://doi.org/10.1002/npr2.12042
  • 北海道大学プレスリリース「ストレス反応が朝と夜で異なる仕組みを解明」(2018年11月27日)https://www.hokudai.ac.jp/news/181127_pr.pdf

“病院医学”では紐解けない
不調の正体を調律する『特別な整骨院』

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院長経歴

検査で「異常なし」でも、つらさは本物
自律神経の乱れを

体の反応から読み解く整骨院

院長 野村晃生(のむら あきお)
柔道整復師/臨床歴20年以上

自律神経のはたらきを軸に、
身体が安心できる『整える施術』を大切にしています。