なぜ、揉んでもらってもすぐ戻るのか

筋肉の線維は、驚くほど簡単に切れる

施術を受けた直後は楽になる。

けれど数日すると、また同じところが硬くなっている。

しかも、前より少し重い気がする。

そういうお話を、当院ではよく伺います。

あなたにも、心当たりがあるかもしれません。

不思議に思っても、理由はよくわからない。

これは、通う回数が足りないからでも、あなたの体が特別に悪いからでもありません。

体の中で起きていることを追っていくと、ごく自然な結果として説明がつきます。

では、何が起きているのか、順に見ていきましょう。

筋肉の線維は、驚くほど簡単に切れる

筋肉は、筋束が集まってできていて、その中に筋線維があります。太さは0.1ミリほど。

さらにその中の筋原線維は、その十分の一ほどです。

筋の線維は、私たちが思っているよりも小さな力で傷みます。

実際、体の中では絶えず小さな傷が生まれ、絶えず修復されています。

運動でも、日常の動作でも、体はそれを繰り返しています。

線維が切れると、体はそこを修復しようとして、コラーゲンのような物質を出します。

筋肉の内側にはカルシウムを蓄えている袋があり、傷ついたときにそれも混ざります。

この混ざったものが、組織と組織をぺたりとくっつけてしまう。

これが癒着です。

筋肉の中でも、筋膜との間でも、脂肪組織でも起こります。

そして、癒着そのものは、日常的に誰の体にも起きていることです。

本来なら、癒着は消えていく

ここが大切なところです。

傷ついた線維は、二、三週間あればつながります。

つながった後、余ったコラーゲンやカルシウムは必要がなくなるので、時間をかけて吸収されたり、排出されたりします。

そうやって、癒着のない状態に戻る。体には、元に戻すための時間が組み込まれています。

問題が起きるのは、この時間が確保できないときです。

まだ吸収されきっていないところに、もう一度傷がつく。

またその上に傷がつく。

短い間隔でそれが繰り返されると、癒着が消える時間がなくなり、そこに残り続けます。

層になって積み上がっていきます。

強く揉んでもらうことを定期的に続けている方の体には、これが起きていることがあります。

施術のたびに線維が切れ、吸収される前にまた切れる。

硬さが取れないどころか、筋肉の質そのものが少しずつ落ちていきます。

剥がれる圧と、切れる圧は違う

癒着が剥がれるのは、おおよそ200グラムから700グラムほどの圧です。

一方、1キログラムを超えると、筋線維は切れます。

指で押し込んだり、痛いくらいに揉んだりすると、その圧はとっくに1キログラムを超えています。

数字で見ると意外に思われるかもしれませんが、人の体はそのくらいで傷んでいきます。

しかも、筋原線維には痛みを感じる仕組みがありません。

切れても本人にはわかりません。

ですから「グイグイ押されて、気持ちよかった」という感覚は、体にとって良かったかどうかの目安にはならないのです。

体のほうは、怪我(筋原線維が切れたこと)をしたことをきちんと把握していて、それなりの反応をしています。

触れ方には「量」がある

私の修行時代、まだ人の体に触らせてもらう前に、まず秤を使って200グラム、500グラムという量を徹底的に覚えさせられました。

なぜかというと、感覚だけで覚えるとずれるからです。

患者さんの体は一人ひとり違います。

柔らかい方もいれば、硬い方もいる。

500グラムで押しているつもりが1キログラムになっていた、ということが普通に起こります。

さらに、真下に押すときと、横から押すときでは、重力のかかる向きが変わります。

同じ「200グラム」でも、体に起こる反応は変わってしまう。

だから、どんな状態でも「同じ量」で触れられるようになるまで、繰り返し訓練します。

当院が加減を大切にしているのは、剥がれる圧と、傷つける圧の境目が、そのくらい近いところにあるからです。

硬さは、原因ではなく結果です

「硬いところをほぐせば良くなる」という順番ではありません。

硬くなるだけの経過があり、癒着が積み重なった結果として、いまの硬さがあります。

ですので、ご自身で強く揉んだり、道具で押し込んだりされるのは、どうか控えてください。

良くしようとした手が、そのまま新しい癒着の原因になってしまいます。

まずは、体が元に戻るための時間を取り戻すことのほうが先です。

なお、体の使い方の土台として、立ったときの重心のかかり方や、足の接地の状態も関わってきます。

重心のずれを整えても、各部分の質が落ちたままだと戻りやすい。

この点については、また別の記事でお話ししていきます。

「揉んでも戻る」を繰り返してきた方こそ、一度、体の状態そのものを見せてください。

どこに癒着があり、どこから戻せるのか。

触れればわかります。

ご予約・ご相談は、お気軽にどうぞ。

次回は、「柔らかい」と「緩んでいる」は同じではない、というお話をしていきます。

のむら整骨院 院長 

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“病院医学”では紐解けない
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院長経歴

検査で「異常なし」でも、つらさは本物
自律神経の乱れを

体の反応から読み解く整骨院

院長 野村晃生(のむら あきお)
柔道整復師/臨床歴20年以上

自律神経のはたらきを軸に、
身体が安心できる『整える施術』を大切にしています。