深呼吸しても、なぜ楽にならない?
脳に酸素を届けたいとき、大きく息を吸い込むことは、実はあまり役に立ちません。大切なのは、静かでゆっくりした呼吸に自然と戻れる体の状態です。この記事では、その鍵になる「首」と「横隔膜」の関係と、ご自宅でできるストレッチをご紹介します。
脳に酸素を送る方法を探している方へ
頭がぼんやりする。考えがまとまらない。息が浅い気がする。
そんなとき、「脳に酸素を送らなければ」と、思いきり深呼吸をしたくなるかもしれません。
けれど、息をたくさん吸い込めば、そのぶん脳に酸素が届くというわけではありません。むしろ吸いすぎると、血液中の二酸化炭素が減り、脳の血管は細くなる方向に働くことが知られています。息を吸いすぎたときに、頭がくらっとするのはそのためです。
脳に必要な酸素が届きやすいのは、呼吸が静かで、ゆっくりと深いところで行われているときです。では、その呼吸を妨げているものは何なのか。私は、その一つが「首」だと考えています。
横隔膜は、もともと首の高さで生まれた
呼吸の主役は、胸とお腹のあいだにある「横隔膜」という筋肉です。
この横隔膜は、お母さんのお腹の中にいる時期に、首の高さでつくられます。
そして体が育つにつれて、少しずつ下へ降りてきて、今の位置に収まります。
そのため、横隔膜を動かす神経(横隔神経)は、今でも首の骨のあいだから出て、はるばる胸の下まで伸びています。
つまり横隔膜は、生まれたときから首とつながっている筋肉です。
私は、首の状態が呼吸の深さに影響しやすい理由の一つを、ここに見ています。
首と呼吸のつながりは、それだけではありません。
首の左右、脈を触れるあたりの奥には、血液の中にどれくらい酸素や二酸化炭素が含まれているかを感じ取るセンサー(頸動脈小体)があります。
その情報は脳に送られ、脳から横隔膜へ「呼吸しなさい」という指令が出ます。
呼吸の深さやリズムは、首を通る情報によっても調整されているのです。
首が固まると、息は上に上がる
長時間のパソコンやスマートフォン、緊張の続く毎日。首や肩には、知らず知らずのうちに力が入っていきます。
臨床で体に触れていると、首まわりが固くなっている方ほど、お腹ではなく胸の上の方だけで呼吸していることが多いと感じます。
横隔膜が十分に動かないぶん、首や肩の筋肉を使って息を吸うようになり、そのことがまた首を固くする。そんな循環です。
だからこそ、呼吸を深くしたいときには、呼吸の練習より先に、首のこわばりをゆるめることが近道になる場合があります。
首と横隔膜をゆるめるストレッチ
このストレッチでは、ただ伸ばすのではなく、一度軽く力を入れてから伸ばします。
筋肉には、力を入れたあとにゆるみやすくなる性質があるので、いきなり伸ばすよりも、無理なく首まわりをゆるめることができます。
基本の流れ(1方向につき)
- 手で頭を押さえ、首を動かそうとする方向に、軽く力を入れます。手と頭が押し合って、頭は動かない程度の力です。そのまま3秒。
- 力を抜き、いま力を入れていた側の筋肉を、軽く伸ばします。ぐっと伸ばす必要はありません。「少し張っているな」と感じる程度で5秒。
- ゆっくり元の位置に戻します。
4つの方向
- 前: 両手をおでこに当て、頭を前に倒す方向へ力を入れて3秒。力を抜いたら、頭を少し後ろへ倒して、首の前側を軽く伸ばして5秒。
- 後ろ: 両手を組んで後頭部に当て、頭を後ろへ倒す方向へ力を入れて3秒。力を抜いたら、あごを軽く引いて、首の後ろ側を軽く伸ばして5秒。
- 右: 右手を頭の右側に当て、頭を右へ倒す方向へ力を入れて3秒。力を抜いたら、頭を左へ軽く倒して、首の右側を伸ばして5秒。
- 左: 左手を頭の左側に当て、右と同じように行います。
前・後ろ・右・左で1セットです。1日3セットくらいを目安にしてください。回数を増やす必要はありません。
行うときの注意
- 首はとても繊細な場所です。力を入れるときも伸ばすときも、軽く、優しく行ってください。
- 息は止めずに、ゆっくり呼吸を続けながら行います。
- 痛みやしびれ、めまいが出たときは中止してください。症状が続く場合は、医療機関にご相談ください。
動画でも手順をご覧いただけます(動画:「自律神経の司令塔、脳にしっかりと酸素を送り、自律神経失調症の症状を改善する万能ストレッチ【のむら整骨院 大阪】」)。
呼吸が深くなったかを確かめる
ストレッチのあと、片手をお腹に、もう片方の手を脇腹に当ててみてください。
息を吸ったときに、お腹や脇腹が、前だけでなく横にもふくらむ感じがあるでしょうか。ストレッチの前より、息が少し下まで下りてくる感じがあれば、横隔膜が動きやすくなっているサインです。
何も変わらないように感じても、かまいません。長く力が入っていた体は、ゆるんだことにも気づきにくくなっています。数日続けて、比べてみてください。
まとめ
- 脳に酸素を届けるのに必要なのは、たくさん吸うことではなく、静かでゆっくりした呼吸です。
- 呼吸の主役である横隔膜は、首の高さで生まれ、今も首から出る神経で動いています。
- 首のこわばりをゆるめることが、呼吸を深くする近道になる場合があります。
のむら整骨院 院長 ![]()



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院長 野村晃生(のむら あきお)
柔道整復師/臨床歴20年以上
自律神経のはたらきを軸に、
身体が安心できる『整える施術』を大切にしています。





