なぜ私たちは「痛み」という感覚を持っているのか?
「痛み」それは、とても不快で本当につらいものです。
こんなにつらいものなら、いっそ、痛みを感じなくしてほしい!
そう思われることでしょう。
しかし、「痛み」という感覚がなかったらどうなるでしょうか?
実は、その感覚がないまま産まれてくるヒトは実際に存在します。
「先天性無痛症」
生まれながらにして「痛覚神経」を持ち合わせていない疾患です。ですから、「痛み」がどの様なものかも理解できません。そして、危険を回避することができず、残念ながらあまり長くは生きられません。
「痛み」という感覚は、言葉を変えると「警告アラーム」。
危険がせまっていることを知らせる重要な役割を担っています。これが切れていたらどうなるでしょうか?想像するだけで、恐ろしくなるかもしれません。
医療の現場では、この機能を意図的に遮断することもできます。しかし、時と場合により、その選択は難しいものになるでしょう。
ただ、いずれにせよ、「痛みの感覚」がどの様な仕組みなのか?知識としてある程度知っている必要はあると思います。
1. 痛みが脳に伝わる仕組み
例えば、「足の裏が痛い」と感じたとき、この「痛い!」は脳が認識しています。
しかし、“足の裏”が痛いはずなのに、どうやって情報が脳にまで届いているのでしょう?
答えは「神経を使って情報を伝えている」です。
実に当たり前の回答ですが、これはとても重要なことですので、詳しくご説明いたします。
では、この「神経」は、どのような仕組みで情報を脳まで伝えているのでしょう?
答えは“デンキ”を使っています。
“電気のコード”や“電話線”と同じ仕組みです。
つまり、足の裏にある神経の先端が痛みを感じ、そこで電気を発生させ軸索(電気コード)という場所を通って脳まで信号を伝えています。
神経は電気コードですから、そこに電気が流れると「痛い」と感じ、流れない時は「痛み」を感じません。
神経が切断されるとどうなるか?
では、この電気コードを切断するとどうなるでしょうか?
当然、電気は流れません。そして、情報も伝わりません。
つまり、神経は切れても「痛み」を感じる事はありません。
ここで、一番お伝えしたいことは、神経は「情報を伝えているだけ」ということです。
2. 神経の「種類」と「全か無かの法則」
「神経」とひとくちにいいましても、いろいろな種類があり、ひとつの神経であれもこれも伝えているわけではなく、それぞれ専門に特化しています。
- 目の視神経は“光”だけに反応
- 耳の聴覚神経は“音”にだけ反応
- 「痛み」は、「痛み専門の神経」だけが反応
視神経に、大きな音を聞かせても反応しないのと同じように「痛み専門の神経」は「痛み」にしか反応しません。
さらに、神経の特性として、「全か無かの法則」というものがあります。
難しく聞こえますが、これはスイッチのON、OFFのみのことで、強弱は伝えることができません。
しかし、実際、私たちは痛みの強弱を感じています。これは、“活動電位の発火頻度”が関係しています。
つまり、反応する頻度が高い時は強く感じ、少ない時は弱く感じるという仕組みになっています。
3. 「痛み専門の神経」がある場所・ない場所
視神経は目にあります。聴覚神経は耳にあります。
では、「痛み専門の神経」はどこにあるのでしょうか?
体中のどこにでもあるように思われるかもしれませんが、実は、特定の場所にしかありません。
「痛み専門の神経」がないところ
まず、爪(つめ)と毛です。日常的に切っていますが、痛みを感じません。
その他に、以下の場所にも「痛み専門の神経」はありません。
- 骨
- 軟骨
- 椎間板
つまり、骨折したとしても、膝や股関節の軟骨がすり減っていたとしても、本来痛みは感じないはずです。そして、椎間板もしかりで、減ったり、変形したり、つぶれたりしても痛くないはずです。
にわかに、信じられないかもしれません。
「骨折すると痛いじゃないか!」と思われたことでしょう。私も3回ほど骨折し、とても痛かったことを覚えています。
これは、一体どういうことでしょうか?
実は、「骨」が痛みを感じているのではなく、骨折により、周りの筋肉、腱、靭帯、膜が傷ついて「痛み」を感じているのです。
軟骨がすり減っても痛くない理由
プロ野球のピッチャーは、激しい投球トレーニングにより肩の軟骨がスリ減っていることをご存じでしょうか?投球時に近くで聞くと、ゴリゴリとすごい音が鳴っています。それでも、150キロの豪速球を投げられるということは…。
テレビや雑誌で「膝が痛いのは、軟骨がスリ減っているからだと言われています!」というセリフが数年前まで使われていましたが、最近は聞かなくなったと思います。
軟骨がスリ減ることと、痛みとは関連がないことを示唆している例です。
ここで、お伝えしたい重要な事は、「骨、軟骨、椎間板」そのものは痛みの原因ではないということです。
「痛み専門の神経」があるところ
では、「痛みを感じる神経は」どこにあるのでしょうか?
それは、筋肉・腱・靭帯・膜(脳や内臓に関するものも含む)など、からだの中で“伸び縮みするところ”にあります。
ですから、「痛み」は、この筋肉・腱・靭帯・膜で、何かしらの異常があることを知らせています。
そして、厄介なことに、筋肉・腱・靭帯・膜は、レントゲンやMRIで異常を見つけるのは、とても困難なところだということです。
4. 痛みの発生メカニズム:「酸欠」の警告
では、筋肉・腱・靭帯・膜でどのような異常がおこっているのかを、詳しくご説明いたします。
体には、動脈と静脈という2種類の血管があり動脈の血液を動脈血、静脈は静脈血といいます。
動脈血は、体の各細胞に酸素や栄養を届けています。そして、静脈血は、老廃物や二酸化炭素などを運んでいます。
細胞に十分な酸素が届かなくなると『酸欠状態』になり、その細胞は死んでしまいます。
これを防ぐために“警告アラーム”として「痛み」という感覚を使い脳に知らせます。
意外に単純だと思われたかもしれませんが、このような仕組みで痛みを感じているとご理解ください。
5. 痛みの種類と共通点
痛みの種類は、大きく分けて3つです。
- 切創や打撲、捻挫などの外傷(ケガによる痛み)
- 筋肉を筋力以上に動かした時の痛み(運動による筋肉痛)
- 特別、何かした訳でもないのに痛む(慢性的な痛み)
このように分けましたが、基本的に痛くなる原理は同じです。
1、外傷(ケガによる痛み)
切創や打撲、捻挫は、いずれも血管(毛細血管等)が切れてしまいます。
すると、その周辺の細胞の血液供給が止まり酸欠になり痛みを感じます。そして、切れた血管が修復されるまで痛みはおさまりません。
2、運動による筋肉痛
ヒトは、筋肉を動かすとき、エネルギー源として酸素とグルコース (glucose:ブドウ糖) を使います。
急激な運動を行うと、酸素の供給が追いつかなくなってしまいます。
そのような時は、筋肉に蓄えてるピルビン酸という物質が乳酸に変化し、酸素の代わりをします。通常、乳酸は静脈から排出されますが、普段運動していない筋肉では排出が十分に行えずたまってしまいます。
そして、酸素の通り道である血管をふさいでしまい、酸欠状態になり痛みを感じます。これが、いわゆる「筋肉痛」です。
3、慢性的な痛み(特別、何かした訳でもないのに痛む)
これは、一般的に『慢性痛』と呼ばれるもので、医療現場で「なかなか治らない痛み」として扱われています。
実は、医師を含む医療に従事する人々の現場では『構造(骨の変形など)』や『炎症(ウイルスの感染など)』の治療が優先されるため、『酸欠』の視点は見落とされがちです。 ですから、痛みの仕組みについても、基本的には“炎症”への対処が中心となります。
しかし、ほとんどの慢性痛に“炎症反応”は起こっていません(炎症細胞も確認されていないことが多々あります)。
ゆえに、ほとんどの医療の現場では本当の原因(酸欠)にたどり着けないまま、「腰痛症」や「腱鞘炎」、「変形性股関節症」という診断名がつけられ、痛み止めの薬やシップ、麻酔の注射でその場をしのいでいるのが現状です。
実際は、この『慢性痛』の場合も、細胞が「酸欠状態」になっているだけです。
6. 慢性痛の真犯人:ポリモーダル侵害受容器と「硬い筋肉」
何ヶ月も、何年も痛みを感じ続ける慢性痛の原因は何でしょうか?
感覚神経の先端には特殊なセンサー「受容器(じゅようき)」があります。
- “痛み”を感じる神経(痛覚ニューロン)
- “熱い”を感じる神経(温感受性ニューロン)
- “冷たい”を感じる神経(冷感受性ニューロン)
- “触れている”を感じる神経(触圧覚ニューロン)
痛みを感じる神経の受容器には“ポリモーダル侵害受容器”という種類があり、これが慢性痛と深い関わりがあります。これらは、筋肉・腱・靭帯・膜など、からだの中で“伸び縮みするところ”に存在します。
特に、筋線維と筋膜の間に痛覚受容器が多く存在し、これらが反応していると考えられます。
筋肉で何が起きているのか?
筋肉が緊張し硬くなっている。ただ、それだけです。
(硬いというのは、柔軟性のことではなく、触ってみて、軽く押してみて「硬い」状態です)
筋肉が緊張し硬くなることで、縮むチカラがはたらきます。
この“縮むチカラ”により、筋肉の中を通っている血管を圧迫して細くしてしまいます。
イメージしてみてください。庭の水撒きホースを足で踏むと、水は止まってしまいますよね? 硬くなった筋肉は、まさにこの『踏まれたホース』状態です。血管というホースが筋肉に締め付けられ、酸素という水が届かなくなっているのです。 そこでいくら痛み止めの薬を飲んでも、ホースを踏んでいる足(筋肉の緊張)を退けない限り、水は流れません。
こうなると、動脈血の流れが悪くなり、その筋肉などの細胞が「酸欠状態」となり、危険である事を「痛みの感覚」を使い脳に知らせています。
酸素が不足すると、細胞は“ブラジキニン”や“ヒスタミン”という『発痛物質』を放出します。
この発痛物質に“痛覚ニューロン(ポリモーダル侵害受容器)”が反応し、痛み、シビレ、重い、だるいなどの症状を呈します。
これが、慢性痛のメカニズムです。
医学部テキスト『標準生理学』の記述
この事は、医学部で学ぶテキストにも記述されています。
引用:
筋の収縮によって痛みが起こる。(中略)
筋の血流を止めると痛みが起こる。筋収縮時の代謝産物として発生する乳酸やカリウムイオン、セロトニン、ブラジキニン、ヒスタミンなどが過剰に蓄積して痛みを起こすとされている。(中略)
血流改善が「こり」、「しびれ」や「痛み」の寛解とかかわっている。
しかし、病院などの医療機関で、このような話しを聞く事はほとんどありません。
レントゲン、CT、MRI等のキカイに頼る事が多くなり、本当の原因を見失っているのかもしれません。
画像診断と手技療法の役割の違い
誤解のないようにお伝えしておきますが、病院で行うレントゲンやMRIなどの画像診断は、骨折や腫瘍といった「構造の異常」を見つけるのには非常に優れています。これは命を守るために素晴らしい技術です。
しかし一方で、今回お話ししたような「筋肉の酸欠」や「血流不足」といった「機能の異常」は、画像には写りません。 「痛いのに、検査では異常なしと言われた」という現象は、まさにこれが理由です。
「構造」を見る医療と、「機能」を見る手技療法。
画像には写らない「機能の異常(酸欠)」を、直接手で触れて見つけ出し、解決へと導くこと。それこそが、私たち手技療法家の役割なのです。
私は20年以上、人の体に触れ続けてきました。 画像には写らない、筋肉のわずかな硬結(コリ)や、皮膚温度の微妙な変化を指先で感じ取ることができます。
機械が見逃してしまう『酸欠のサイン』を、手で見つける。それが私の仕事です。
7. なぜ筋肉は硬くなるのか?(自律神経との関係)
ここで最後に、ひとつの疑問が残ります。
「なぜ、ケガもしていないのに筋肉は勝手に硬くなるのか?」
それは、「自律神経」が大きく関わっています。
ストレス、不安、過労、天候の変化…。
これらによって自律神経のバランスが崩れ、「交感神経(緊張の神経)」が過剰にはたらくと、体は無意識のうちに力が入ってしまいます。
さらに、交感神経が優位になると、血管そのものも収縮します。
「自律神経の乱れ」→「筋肉の緊張」→「血流不足(酸欠)」→「痛み」
この連鎖こそが、長引く痛みの正体なのです。
最後に:その痛み、あきらめる必要はありません
痛みは、決してあなたを苦しめるためにあるのではありません。 「酸素が足りないよ」「少し休んで」という、体からの必死のメッセージであり、愛ある警告です。その声に耳を傾けてあげれば、体は必ず応えてくれます。
確かに、現代医学の画像診断は素晴らしいものですが、今回お話ししたような「筋肉の酸欠」や「血流不足」は見落とされがちです。
逆に言えば、「血流を改善し、細胞に酸素を届ける」ことで、長年苦しんだ痛みから解放される可能性は十分にあるということです。
のむら整骨院では、自律神経の調整を通じて、この「血流」と「筋肉の緊張」にアプローチします。
「どこに行っても原因がわからなかった」という方こそ、一度ご相談ください。
あなたの体が出している「警告アラーム」の意味を、一緒に紐解いていきましょう。
痛みは、あなたの敵ではありません。むしろ、一番の味方です。命を守るために、必死で声を上げてくれているのですから。
のむら整骨院 院長 ![]()
“病院医学”では紐解けない
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